江戸の文人音楽ー坂田進一の世界ー

しばらく前から何度も何度も繰り返し聞いている一枚のCDがある。
坂田進一の世界/江戸の文人音楽ー付録、江戸の三曲合奏
たぶん一般には流通していないCDだと思う。
これは私の先生、坂田進一氏が琴曲、箏曲、地歌、清楽とうの独奏曲や合奏曲を全てお一人の演奏で多重録音等を駆使して世に送り出したCDである。
全12曲。録音はドイツのクルト・ザクッス・ホールと日本の文学座録音室の2か所で行われている。ほとんどはドイツで録音されたものを再構成しているようだが、なぜそうしたかについては、ここでは語らない(知ってはいるが)。

この名演は江戸の音楽、特に劇場音楽ではない、武士の集まりや文人と呼ばれた人々、つまり書家や画家、茶人、俳人、僧侶などが愛した音楽に光を当てている。

合奏であってもすべて一人で演奏しているのだから、そこにはある意味不自然さはあるが、反面、音楽表現の横振れは少なくかなりはっきりと美意識が現れていて、充実した録音だと言える。

そしてこのCDにいま自分はかなりはまってしまった。とにかく聴いていて飽きないどころか、いよいよ深みにはまって行く感じ。このマイブームは当分続きそうだ。

じつは私自身も古楽器に関してはマルチプレーヤーで、一人で何種類もの楽器を演奏している。だから多重録音を使えばソロの曲も伴奏付きのものも、トリオも、一人の演奏でやれないことはない。もっともその気を起こしたこともないのだが、坂田先生はまさにそれを成し遂げてしまった。そうそう、箏曲や地歌では歌も歌っている。私も最近の自分のコンサートでは楽器演奏だけでなく、弾き語り風に歌も入れている。それは、一番素朴な音楽の根本は人が歌うことにあると思うからだ。声が悪いとか、歌が下手とかであっさり歌うことを諦めていたのでは、真の音楽家とは言えないのではないかという気持ちの現れ。

古楽と言うと、まるで西洋の古い時代の音楽だけを指すように思いがちだが、実際には日本や中国その他のアジアの国にも、古楽は立派に存在し演奏されている。ヨーロッパの楽器を勉強しているものが無視している世界、しかし、じつは恐ろしく深く豊かなアジアの古楽の世界がある。もちろん日本の古楽も本当にいい。

あえて邦楽とは言わない。邦楽にはもはや伝統を捨て、たとえばピアノの音階や表現法と同調したもの、形だけ日本の楽器で邦楽の音を使っているが、そのくせ中身や精神性はすっかりアメリカナイズされてしまったものが耳に付く。あまりに安っぽい変化で、残念に思う。

さて、
坂田進一の世界/江戸の文人音楽ー付録、江戸の三曲合奏、このCDに興味のある方は連絡を下されば購入方法などはお教えいたします。

グローバル化の悪影響で、伝統音楽の世界でも真に日本的な個性が消えつつあるのが不安です。

世界は一つではない。文化は一つではない。それらは無限でなければいけないのです。
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by toshimusikk | 2007-05-30 00:14 | 音楽
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